辛いこと、悲しいことを経験すると、眠れなくなったり、何かが引き金となって当時の辛い気持ちが蘇ってきたりすることがあると思います。
「トラウマ」という言葉も、広く知られるようになりました。
辛い経験、トラウマと関係する診断として、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)というものがあります。
PTSD(心的外傷後ストレス症候群)とは
DSM-5(アメリカ精神医学会診断統計マニュアル第5版)によれば、PTSDとは、「実際にまたは危うく死ぬ、深刻な怪我を負う、性的暴力など、精神的衝撃を受けるトラウマ(心的外傷)体験に晒されたことで生じる、特徴的なストレス症状群」であるとされています。
出来事の例としては、地震などの自然災害や暴力、事故にあうこと、虐待を受けること等があります。
DSM-5では、家族や親しい人がトラウマ体験に巻き込まれたことを知ったり、見聞きすることもPTDSを引き起こすトラウマ体験として考えられています。
主な症状
- 侵入症状・・・心的外傷的出来事が再び起こっているように感じたり行動したりすること(フラッシュバック)。また、出来事に関する不快な記憶が突然頭に浮かんだり、繰り返し悪夢を見ることで動揺して動悸や発汗等の身体症状が出現したりする。
- 回避症状・・・心的外傷的出来事に関する記憶、思考、感情、あるいはそれらを思い出すきっかけとなるような物や状況を避ける。
- 気分や認知の陰性の変化・・・過剰に否定的な考え方や、心的外傷的出来事についてのゆがんだ認識、興味や関心の喪失、孤立感。幸福や愛情を感じなくなるなど。
- 過覚醒・過剰反応・・・イライラ間、過剰な警戒心、驚愕反応、集中困難、睡眠障害など。
上記のような症状が1か月以上持続し、それにより苦痛が生じ社会生活や日常生活に支障をきたしてしまう状態が「心的外傷後ストレス症候群(PTSD)」とされています。
(症状の持続が1か月未満の場合、PTSDとは別に「急性ストレス障害」という診断名があります。)
診断基準にすべて当てはまらない場合でも、過去の経験をきっかけとして辛い症状に悩まされることがあります。
そのような場合、PTSDと同様に医療機関を受診したり、カウンセリングを受けたりすることで、現在の辛さを和らげて回復へ向かうサポートを受けることも可能です。
カウンセリングでは、認知行動療法や、EMDR(眼球運動による脱監査と再処理法)、TFT(思考場療法)など、トラウマ治療に効果があるとされている技法を用いて治療をすすめることもあります。
また、医療機関では症状に応じて薬物療法を受けることも可能です。
カウンセリングではご自身に合った治療法や進め方を選べるように、現在の気持ちやゴールとなる目標を確認したり、治療法についてご説明したり、お1人お1人のペースに合わせて進めていくことを心がけています。