エクスポージャー法
エクスポージャー法とは、限局性恐怖症等に対する治療方法の1つであり、恐怖の対象となる刺激とあえて近づき、その時間を増やしていくことで恐怖刺激に慣れ(馴化)、恐怖反応を消去することを目的としています。
ここで言われる「恐怖刺激」とは、その物を目の前にしたり、その状況になると強い恐怖や不安を感じる刺激のことです。
たとえば、「クモ恐怖症」の場合の「クモ」、「閉所恐怖症」の場合の「閉所(出口のない
閉じられた場所)」が「恐怖刺激」となります。
「恐怖刺激へ慣らす」ことを目的とした方法として、当初は「最も恐怖や不安を感じる刺激を使う」ことが良いとされ、「フラッディング法」と呼ばれていました。
その後研究が重ねられる中で、恐怖刺激の強さを弱いものから段階的に強いものへと変更していく方法が主流になってきました。徐々に刺激を強いものへ変えていく方法を、「エクスポージャー法」や「段階的エクスポージャー法」と呼びます。
暴露反応妨害法(エクスポージャー反応妨害法)
恐怖刺激を弱いものから段階的に強いものへ変更しながら、接近する時間を増やしていき徐々に慣らすこと(馴化)で恐怖反応を軽減させていく方法をエクスポージャー法と呼びます。
さらに、恐怖刺激に接しながら、それによって引き起こされる困った反応(回避行動や恐怖反応等)を制止させる「反応妨害法」を組み合わせた治療法を、暴露反応妨害法(エクスポージャー反応妨害法)と呼びます。
回避行動とは、例えば「犬が怖い」場合に犬を飼っている家の前を絶対に通らないよう、常に遠回りをするような行動や、「広場恐怖」の場合に外出をせずにひきこもる行動のことを指します。
回避行動は、恐怖刺激を回避することで不安や恐怖などの苦痛が減るという負の強化(行動した結果嫌なことが減ることで、その行動がより増える)により維持されることになります。
つまり、「犬が怖い(イヌ恐怖症)」の場合に、犬に絶対遭遇しないように回避しながら行動することによって、犬と会わない=恐怖を感じないで済むので、また次に出かけるときも犬を回避しよう、ということになります。
しかし、一見その場での恐怖は減るものの、生活全般における不安や恐怖の強さ・頻度はかえって増えてしまうと言われています。
エクスポージャー反応妨害法によって、回避行動を一定時間我慢することにより、不安や恐怖は徐々に軽減し、回避行動をおこなわなくて済むようになることが予測されます。
ただ、強い恐怖や不安を感じる対象と接近することは、本人にとってかなり負担の高いものであり、回避行動を我慢する際には治療者や治療協力者(家族等)の協力により制止し続ける必要がある場合も多くあります。
回避行動を止められると、はじめは不安が増大するものの、「結局大丈夫だった」「思っていたような大変なことにはならなかった」という学習を重ねることで不安は軽減していきます。
現実暴露法とイメージ暴露法
エクスポージャー法の中で使用される「恐怖刺激」は、実物を使用する方法と、使用しない方法に分かれます。
実際の物や、現実の場面を使って治療をおこなう方法を「現実暴露法」と言い、例えば学校や職場等の特定の場所に恐怖を感じる場合、「校門まで行く」「職場のエントランスまで行く」等、実際の場所へ行き、馴化する(慣れる)ことで恐怖反応や回避行動を消去することを目的とします。
実際の物を使用しない方法は、イメージの中で恐怖刺激を向き合うため、「イメージ暴露療法」と呼ばれます。現実暴露法のほうが効果が高いと言われていますが、実際の場面や実物と接するのは恐怖が強く難しい場合に、イメージの中で、つまり頭の中で恐怖の対象と近づく練習をしていく方法が実施しやすいといった利点もあります。