感情が先か行動が先か
昔から「笑う門には福来る」と言われます。
「いつも楽しそうにしている家には、自然とと良いことや幸せがやってくるという意味だそうです。
心理学でも、
「楽しいから笑うのか、笑うから楽しいのか」
「泣くから悲しいのか、悲しいから泣くのか」
といったことが多くの人によって研究されてきました。
感情がどうやって生まれるのかについて、明確なメカニズムはまだ明らかになっていません。
しかし、いくつかの研究に共通して言われていることとして、
「生理的な反応(動悸や震えなど)を知覚することが、感情を経験することにつながっている」
というものがあります。
つまり、「笑うから楽しい」「泣くから悲しい」というような体の反応と心の動きの関係が少しずつ明らかになってきています。
抹消起源説
その1つが「抹消起源説」であり、「刺激によって身体反応(動悸など)が生じ、それが脳に伝達されることで感情体験が生まれる」と主張する説です。
先ほどの「笑うから楽しい」ということと同じですね。
心理学者のジェームズやランゲによって提唱されたため、それぞれの名前をとって「ジェームズ=ランゲ説」とも呼ばれます。
例をあげると、家に1人でいるときに地震があった場合、どのような反応が起こるでしょうか。
びっくりして体や表情がこわばり、心拍数が上がってドキドキしてきて、冷や汗をかくこともあるかもしれません。そのような体の反応を脳が認識することが、恐怖や不安といった感情の自覚に繋がるとするのが、抹消起源説となります。
感情の伝染
自分の体の反応を自覚することで感情が生まれるという考え方をご紹介しましたが、脳内では似たようなことが「自分以外の人の反応」に対しても生じていると考えられています。
ミラーニューロンという言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
ミラーニューロンは、共感細胞と呼ばれることもあり、他者の感情を理解したり、行動を真似ることで必要な技術を習得したりするために必要な脳内の細胞です。
ミラーニューロンが働いている場面の例を挙げると、以下のようなものがあります。
- 正面の人があくびをしたタイミングで、自分もなぜかあくびが出た
- 怒りながらまくしたてるように話している人を見ていて、自分もイライラしてきた
- 舌打ちをしている人が近くにいて、もやもやした気分になった
- おいしそうに食事をしている人を見て、お腹が鳴った
日常の中で、誰しもそのような体験をしたことがあるのではないかと思います。
食事の例で言うと、食べている人を見た時に、脳内で「あたかも自分が食べているように」感じてしまうのがミラーニューロンの働きといえます。
この時、自分は食べていない状態でも、食事中の人を見ているだけで、自分が食べている時と同じような脳の領域が活動すると言われています。
同じように、イライラした人の近くにいると、無意識にその人と近い脳の状態が作り出され、結果として「今まで普通に過ごしていたのに自分もイライラしてくる」というような現象が起こってくると考えられます。
まとめ
笑顔を心がけること、姿勢を正すこと、など良い習慣として言われてきたことは、実際にポジティブな感情を作りやすくする習慣でもあることが分かります。
そして、自分自身が落ち着いた状態、気分の良い状態でいることは、自分だけではなく周囲の人へも良い影響があるのですね。
自分自身を良い状態に保つには、やはり自分自身の状態を把握するメタ認知と、状態に合わせたセルフケアが大切です。
これからもセルフケアについて、引き続き取り上げて行きたいと思います。