良い目標の作り方
仕事でも学習でも、趣味の世界でも、「目標を立てて達成するために行動する」ということは同じかもしれません。
新年の目標を立てたけれども気がついたら意識せずにいつも通り生活をしている、
ダイエットをしたいけれど続かない、
学習計画を立てたけれど思ったようにいかない、
そのような経験は誰しもしたことがあるのではないでしょうか。
心理学では、良い目標の立て方として、「スモールステップ」という言葉がよく使われます。
スモールステップ
スモールステップとは、心理学者のスキナーが提唱した学習方法、プログラム学習の中で言われている目標設定の方法です。
スキナーは、目に見えない感情ではなく、動物の行動の実験・観察を通して、「行動はどうやって身につくのか?」というような理論を提唱した心理学者です。
その中でも、オペラント条件付けという理論が特に有名です。
例えばネズミに「箱の中に設置した小さなレバーを押す」という行動を学習させたいという目標があった場合、まずはネズミが自由に動き回って偶然レバーを押した時に、エサが出てくるようにします。
それを繰り返すと、「レバーを押すとエサ(ネズミにとっての報酬)が出てくる」ということを学習したネズミは、自分からレバーを押すようになります。
このように、行動の後に与えられる「報酬」や「罰」によって、その行動をたくさんするようになることを、オペラント条件付けと呼びます。
このオペラント条件付けの理論を、人間の学習に応用しようとしたものが、プログラム学習法です。
プログラム学習法の5つの原理
プログラム学習法の中で、学習が成り立つための5つの原理として以下のものが挙げられています。
1.スモール・ステップ
課題の難易度が「ゆるやかに上がっていく」ように設定することで、「できた」という成功体験の積み重ねをしやすく、意欲の維持・向上につながると考えられます。
また、ゆるやかに難易度が上がることは、学習者の負担を軽減することにもつながります。
2.即時フィードバック
学習者が問題を解いたら、すぐに正誤のフィードバックをおこないます。
フィードバックが即時にある方が、良い行動の頻度が増えたり、継続しやすくなる効果があります。
3.学習者の積極性
「モチベーションがあること」と言い換えることもできますが、具体的には講義を聞いたり教科書を読んだりする受動的な姿勢ではなく、「問題を解く」という積極的な行動が合ったほうが学習が進みやすくなると考えられます。
4.学習者に合ったペース
集団で同じように進めるのではなく、1人1人の進度に合わせたペースで取り組むことが重視されます。
そのため、集団のなかで「ペースについていけない」などの状況を防ぐことができます。
5.学習者による検証
教材が効果的だったかどうか、学習はどの程度進めることができたか、といった結果を、学習者自身が検証します。
スモールステップの使い方
スモールステップとは、言葉の通り「目標を達成するために、目標を細かく分けて実践しやすい内容から少しずつ達成していくこと」を指します。
高すぎる目標を立てた場合、なかなか達成できないことにより自信やモチベーションが低下してしまう可能性があります。
「高すぎる目標を変えましょう」「現実的な目標にしましょう」と聞くと、「自分の目標は諦めなければいけないのか」と感じるかもしれません。
実際はそうではなく、「最終目標を達成するために小分けにして考える」方法です。
例えば現在地点が5点として、最終目標を100点とした場合、いきなり100点を目指してもなかなか難しいことは想像ができると思います。
10点、20点という結果が出ても、もちろん5点よりも倍以上高い点数が取れており十分前進していると捉えて良い成果です。
しかし、目標が「100点」だった場合はどうでしょう。
5点より高かったとしても、10点や20点では100点に遠く及びません。
そのため、前進していても本人にとっては「失敗体験」となる可能性が高いのです。
スモールステップの考え方を取り入れると、100点という最終目標はそのままで、
「まずは10点を目指す」
「10点が達成できたら20点を目指す」
「20点が達成できたら…」
と徐々に目標を修正していくことになります。
スモールステップで細分化した目標設定を採用した場合、
「10点とれた」=目標達成①
「20点取れた」=目標達成②
と、同じ結果であっても、「成功体験」の積み重ねをすることができます。
そのため、モチベーションを維持しやすく、自信を育むこともできると考えられます。
最後に
年齢や立場にかかわらず、成功体験を積み重ねながら、自分の進みたい方向に向かっていくことは、「なりたい自分になる」「夢をかなえる」自己実現につながることだと思います。
「がんばっているのに成果が見えない」と落ち込んだり、
「いつも目標達成できない」と自分を責めてしまう時、
少し立ち止まって「スモールステップ」の考え方を取り入れて目標設定を見直してみることも有効ではないでしょうか。