うつ病

うつ病とは

精神的な疾患、病名として思い浮かびやすいものが「うつ病」ではないでしょうか。

DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)によると、うつ病は「抑うつ障害群」に含まれる疾患の1つです。

疲労感や倦怠感などの不快な身体感覚や、悲哀・抑うつ気分などの精神症状、食欲低下や不眠などの身体症状を含む、多様な症状が現れるとされています。

そのような症状のために、「仕事がいつものようにできない」「通学ができなくなった」など、普段通りの生活が送れなくなってしまう状態が「うつ病」と呼ばれます。

辛い体験の後や、うまくいかないことが続いたときなどに、元気が出なかったり落ち込んでしまったりすることは誰しもあります。

通常は自然に回復していくことが多いですが、気分が沈んだままいつまでも回復しない時、もしかしたら「うつ病」の状態になっている可能性があるかもしれません。

同じ「うつ病」でも子どもと大人で現れやすい症状が違っていると言われています。

たとえば・・・

児童期では

思春期以降では女性に多いとされますが、小学生などの児童期では男女差が見られないとされています。

大人よりも言葉で表現することが難しい児童期では、頭痛や腹痛、吐き気、チック、夜尿といった身体的な症状が目立つ傾向があります。

思春期・青年期では

ゆううつや気分の落ち込み、絶望感、過眠、体重変動等が見られやすい傾向があります。

衝動性が強く、不登校・ひきこもりの状態になったり、反対に攻撃的になったり、アルコールや薬物などの問題行動として現れる場合もあります。

成年・壮年期では

職場で重要な役割を担っていたり、家庭での育児や介護といったライフイベントが起こってくる年代であり、うつ病の背景として、ワーク・ライフ・バランスに伴う葛藤など長期間の心理的ストレスを受けやすいことが挙げられます。

初老期では

落ち込みや意欲の減退よりも、不穏・焦燥といった落ち着かなさやそわそわする感じ、さまざまな身体的症状の訴え(身体愁訴)や、自律神経症状が目立つ傾向があります。

うつ病の治療

治療としては、うつ病の仕組みや治療のために必要なことなどの知識を専門家から伝えること(心理教育)、そして、じっくり話を聞き問題の背景を整理しながら解決を目指すことが必要となります。

また、必要に応じて認知行動療法などの心理療法や、運動療法、薬物療法などを取り入れながら、うつの状態やご本人の特性に合ったサポートを継続して受けることが大切です。

DSM-5におけるうつ病の診断基準

A.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの消失である。

(1)その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分

 注:子どもや青年では易怒的な気分(イライラしやすくなる)もありうる。

(2)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)

(3)食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加(例:1か月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の食欲の減退または増加

 注:子どもの場合、期待される体重増加がみられないことも考慮する

(4)ほとんど毎日の不眠または過眠

(5)ほとんど毎日の精神的焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)

(6)ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退

(7)ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)

(8)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の説明による、または他者によって観察される)。

(9)市についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが、反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画

B.その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、またはほかの重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C.そのエピソードは物質の生理学的作用、またはほかの医学的疾患によるものではない。