注意欠如・多動性障害/ADHD 

注意欠如・多動性障害/ADHD

ADHDは、①不注意と、②多動性および衝動性が特徴とされる発達障害(神経発達症)の1つです。

そのような特徴から、周囲からみて「落ち着きがない」「おっちょこちょい」「うっかりさん」と見られたり、良い方向に個性が発揮されると「行動力がある」「エネルギッシュ」などの印象を持たれることも多くあります。

DSM-5の定義では、次の①か②の一方または両方が6か月以上持続することが診断の基準とされています。

①不注意(例:気が逸れる、話のまとまりがない、忘れ物が多いなど)

②多動性(例:過活動、喋りすぎ(多弁)、落ち着きのなさ)と衝動性(例:思い立ったらすぐに行動、待てないこと)

また、①、②の程度が本人の年齢に見合わず、対人関係や学校・職場での困り感が大きいなどの悪影響がみられることも重要なポイントとなります。

不注意

不注意の症状は、以下のような症状が挙げられています。

この中の6つかそれ以上に当てはまる状態が6ヶ月以上続いており、学業や仕事に支障が出ている場合、ADHDに該当する可能性があると考えられます。

  • ⑴学業や仕事などの活動中に、注意を保つことができない。または、不注意による間違いをしやすい(ケアレスミスや見逃しが多かったり、作業が不正確だったりする)。
  • ⑵課題または遊びの活動中に、注意を持続することが難しい(講義、会話、または長時間の読書に集中することが難しい)。
  • ⑶直接話しかけた時に、ぼーっとしているように見えることがある。
  • ⑷しばしば指示に従えず、学業や職場での業務をやり遂げることが難しい(課題をはじめるが途中で集中ができなくなる、脱線しやすいなど)。
  • ⑸やるべきことを順序立てて取り組むことが難しい(資料や持ち物の整理、時間管理、締め切りを守ることなど)。
  • ⑹精神的努力を要する課題(宿題や提出物の作成、長い文章を見直すこと)を避けてしまうことがある。
  • ⑺課題や活動に必要なもの(教科書、筆記用具、財布や鍵などの大切なもの)をしばしばなくしてしまう。
  • ⑻外的な刺激によって、すぐに気が散ってしまう。
  • ⑼日々の活動(用事やお使い、電話の折り返し、支払い、約束を守ることなど)を忘れることが多い。

多動性および衝動性

多動性・衝動性の例として、以下のような症状がまとめられています。

不注意の症状は、以下のような症状が挙げられています。

この中の6つかそれ以上に当てはまる状態が6ヶ月以上続いており、学業や仕事に支障が出ている場合、ADHDに該当する可能性があると考えられます。

  • ⑴しばしば手足をソワソワ動かしたり、トントン叩いたりする。貧乏ゆすり。
  • ⑵席についていなければならない状況で、離席してしまうことがある(授業中の立ち歩きなど)。
  • ⑶不適切な状況で、しばしば走り回ったり高いところへ登ったりする(青年・成人になると、走り回ることはないが「落ち着かない感じ」のみに限られる場合もある)。
  • ⑷静かに遊んだり、余暇活動をしたりすることが難しいことがある。
  • ⑸しばしば「じっとしていない」「エンジンで動かされているように」行動する(例:レストランの席や会議の席に長時間留まることができない、もしくはじっとしていることを不快に感じる)。
  • ⑹しゃべりすぎてしまうことがある。
  • ⑺質問が終わる前に、答え始めてしまうことがある(例:他の人の言葉の続きを言ってしまう、会話で自分の番を待つことができない)。
  • ⑻しばしば他人を妨害し、邪魔をする(例:会話で相手を遮ってしまったり、相手に聞かずに相手のものを使ってしまったりする)

治療・対処

●療育/スキルトレーニング

苦手とすること(順番をまったり、計画立てをしたりすること)を訓練することにより、スキルを身につけていくと、日常生活が送りやすくなります。

大人の方であっても、ご自身に合った対処法を知っておくこと、実践していくことで精神的にも安定して過ごしやすいと考えられます。

●薬物療法

ADHDの原因は明確には不明ですが、さまざまな研究から、脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)などのバランスが乱れることなどが関係しているのではないかと考えられています。

そのため、治療として薬物療法が症状を和らげる効果があるとされます。

●環境調整

トレーニングをしたり、治療を受けたりする中で、「それでも難しい」と感じられる部分については、周囲へ配慮を求めたり、ご自身の得意なことを活かせる職業・学校を選んだりすることで、「生きやすい環境」を作っていくことも有効です。

「水を得た魚のよう」というたとえがありますが、あえて苦手な環境に耐えるよりも、魚にとっての水の中のように、自分にあった環境を選択することでより安定して生活を送ることができるよ考えられます。

カウンセリングでは

カウンセリングでは、ソーシャルスキル・トレーニングを取り入れながら苦手なこと・場面への対処法を考えていくお手伝いをさせていただきます。

また、療育ではお子様の個性や興味に合わせたプログラムを立てて、様々な行動を身に付ける訓練をすることができます。

今までの経験から辛い思いや自信のなさ、落ち込みを感じていらっしゃることもあるかと思います(二次障害と呼ばれます)。

カウンセリングではトレーニング的なやりとりだけではなく、今後どうしていきたいのかを踏まえて、ご本人やご家族の生活全体を考えながら相談を進めること、「強み」や「できているところ」に目を向けてより活かしていくことを大切にしています。

参考文献:

子安増生・丹野義彦・箱田裕司監修(2021).『有斐閣 現代心理学辞典』.有斐閣.

髙橋三郎・大野裕・染谷俊幸・神庭重信・尾崎紀夫・三村將・村井俊哉監訳(2014).『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』.  医学書院.