統合失調症とは
統合失調症は、思春期後半から30歳前後に発症することが多いと言われており、現実との接触が失われることを特徴とした精神疾患です。
「現実との接触が失われる」という状態の例として、現実にはないものが見える・聞こえる体験をする幻視・幻聴等が挙げられます。
実際にどのような症状が現れるかは人によって様々ですが、1つの例として短いエピソード形式で見ていきたいと思います。
会社に就職して働いている30代の男性ですが、ある時を境に「自分は政府によって監視されている」という考えが頭から離れなくなってしまいました。
この「監視」から逃れるために、家のカーテンを常に閉めて生活をしたり、外出を避けたりするようになりました。
さらに、「夜中に自分を監視している人の声が聞こえる」という症状が現れると、なかなか眠れなくなり、睡眠が十分に取れない日が増えてきました。
睡眠不足の影響もあり、仕事中にも集中ができなかったり、眠くなってしまったりという状況が続いて、徐々に日中の活動が困難になりました。
このように、外出や日中の活動が困難になると、仕事の継続などの社会的活動を続けることが難しくなり、異変に気がついた同僚や友人の勧めで病院を受診しました。
主な症状
統合失調症の症状は、大きく「陽性症状」と「陰性症状」に分けられます。
1. 陽性症状(通常は存在しないものが現れる症状)
幻覚:実際には存在しない音や声を聞いたり、物を見たりする。例として、誰もいないのに「誰かが自分に話しかけている」と感じることがあります。
妄想:現実にはないことを信じ込む。例えば、「自分が有名な人物の生まれ変わりである」とか、「周囲の人が自分を害しようとしている」といった考えを抱くことがあります。
思考の混乱:話の内容がまとまらず、話が飛んでしまう。例えば、突然話題が変わり、会話が意味をなさなくなることがあります。
2.陰性症状:通常はあるべきものが欠ける症状)
感情の平板化:喜びや悲しみなどの感情が乏しくなる。例えば、嬉しい出来事があっても表情や反応が乏しいことがあります。
社会的引きこもり: 人との交流を避け、孤立する。例えば、友人や家族との接触を避けて部屋に閉じこもってしまうことがあります。
意欲の低下:日常の活動や仕事への意欲が失われる。例えば、身の回りの整理整頓や家事ができなくなり、身だしなみを整えなくなることがあります。
日常生活への影響
仕事や学業の継続が難しい:集中力の低下や妄想などの症状により、職場での業務や学校での勉強がうまくいかず、休みがちとなる可能性があります。
社会的孤立:思考がまとまらない、幻覚の症状があるなどの理由で、友人や家族とのコミュニケーションがうまくとれず、孤独感が強まります。
自己管理の困難:衛生管理や食事の準備ができなくなり、生活が荒れることがあります。
治療法
統合失調症の治療は、薬物療法と心理社会的治療(カウンセリングやコミュニケーショントレーニング)が中心です。
1. 薬物療法:
抗精神病薬:陽性症状を緩和するために使用されます。これにより、幻覚や妄想が和らぐことが期待されます。
2. 心理社会的治療:
認知行動療法 (CBT):患者が症状を理解し、管理するためのスキルを学びます。
家族療法:家族が統合失調症について理解し、患者をサポートする方法を学びます。
リハビリテーション:社会復帰を支援するプログラムで、コミュニケーションスキルを習得することや、ご本人の状況や希望に応じて就労支援などもおこなう場合があります。
さいごに
病院を受診して適切な服薬をおこなうことで、幻覚や妄想などの陽性症状を軽減させて、安定した状態を作ることができれば、社会生活を送ることができるようになります。
また、カウンセリング・心理療法を併用することで、症状が悪化・再発しないようストレスへの対処法を検討したり、一度お休みしていた会社や学校に戻る場合には社会復帰のためのスキル(コミュニケーションスキルや、生活の管理など)を身につけたりすることが役に立ちます。
また、家族面接でご家族も一緒にお話をしていくことで、ご本人とご家族が一緒に病気や対処法に関する知識を深め、サポート体制を整えることも再発防止につながると考えられます。