子どもたちの心は、種から芽が生えてゆっくりと成長していくように、日々少しずつ変化しながら育っていきます。
この変化を、「心の発達段階」といいます。
心の発達段階を理解することで、子どもたちがどんな課題に直面しているのか、どうサポートできるのかをより詳しく・具体的に知ることができます。
今回は、心理学者のエリクソンとハヴィガーストの理論をもとに、幼児期から青年期にかけての心の成長について、日常生活で見られる具体的な例を考えながらお話しできればと思います。
エリクソンの発達段階理論
エリクソンは、人生を通じて人が経験する心の成長を8つの段階に分けて考えました。
それぞれの段階には特定の課題があり、これをうまく乗り越えることで次の成長段階へと進むことができるとされています。
ここでは、幼児期から青年期の3つの重要な段階について見ていきましょう。
1. 乳児期(0〜2歳):信頼 vs 不信
赤ちゃんの頃、子どもたちは周囲の大人(養育者)との関わりを通して「信頼」を学びます。
たとえば、泣いたときにすぐに抱っこしてもらえたり、オムツを替えてもらったりすることで、周りの世界が「泣いたら応えてくれる」「自分を守ってくれる場所」だと感じられるようになると言われています。
この時期に適切な養育を受けることで、子どもたちは「安心して世界を探索してもいいんだ」と信じられるようになると言えます。
逆に、極端に放置されることが多いと、「泣いても何も応えてもらえない」と、世界に対する不信感が強まる可能性があります。
2. 幼児期(2〜4歳):自律性 vs 恥
この時期の子どもたちは、「自分で何かをやってみたい」という気持ちが強くなります。
よく言われる「イヤイヤ期」と重なる時期ですね。
たとえば、自分で服を着る、靴を履く、トイレに行く、といった行動です。
親が少し手助けをしながらも、できるだけ自分でやらせてあげると、子どもは「自分でできるんだ」という自信を持てるようになります。
そして、失敗ばかりを指摘されると「自分はダメなんだ」と感じてしまい、恥ずかしい思いをすることが増えるという考えから、「自律性 vs 恥」という表現となっています。
3. 青年期(12〜18歳):アイデンティティ vs 役割の混乱
思春期に入ると、子どもたちは「自分とは何者なのか」「どんな仕事をするのか」「何をやりたいのか」を真剣に考えるようになります。
友達関係や趣味、学校での活動を通して「自分らしさ」を模索する、いわゆる自分探しの時期です。
たとえば、部活動や趣味に熱中することで、自分の好きなことや得意なことを見つけたり、逆に「これは苦手だな」と、合わないことを知ったりします。
このプロセスでアイデンティティを確立できると、自信を持って次の段階に進むことができます。
反対にやりたいことや自分らしさが見つからない場合、混乱や不安を抱えやすい時期でもあります。
ハヴィガーストの発達課題
もう一人の心理学者、ハヴィガーストは、各年齢に応じた「発達課題」という概念を提唱しました。
ハヴィガーストの理論では、人生の特定の時期に達成すべき課題があり、それをクリアすることで次の段階へと進むとされています。
ここでは、子どもたちがどのような課題に直面するのかを具体的に見ていきましょう。
1.幼児期:基本的な生活習慣の確立
幼児期における発達課題の一つは、基本的な生活習慣を身につけることです。
たとえば、朝起きて夜寝る、食事のマナーを覚える、お片付けをする、お友達と仲良く遊ぶなど、日常生活でのルールやマナーを学ぶ時期です。
この時期には、最初はただ指示をしたり叱ったりするよりは「こうやるんだよ」と教えたり、お手本を見せて真似させることで、徐々に自分でできるようになっていくような段階と言えます。
2.青年期:自立と社会的責任の習得
思春期になると、子どもたちは「自分で物事を決める」力を育てていきます。「自己決定」とも呼ばれる力で、自分で物事を選び、責任を引き受けることを経験する段階です。
たとえば、進学や部活動の選択など、自分で意思決定をする経験が自然と増える時期ですね。
また、アルバイトを通してお金の使い方や時間の管理を学ぶことも成長のために役に立つ経験だと言えます。学校やアルバイトなど、様々な経験を通して、徐々に社会的責任を果たす準備をしていきます。
周囲の大人はどうサポートできる?
子どもたちがこれらの発達段階をうまく乗り越えられるようにするためには、日常生活での親や周囲の大人のサポートが必要です。
たとえば、小さな成功体験を積ませてあげたり、失敗した時に受け止める・励ます関わりをしながら次にチャレンジさせたりすることが、子どもたちが自信を持ち、前向きに成長していく手助けとなります。
エリクソンやハヴィガーストの理論を参考にしながら、日々の子どもとの関わりの中で様々な言動を観察すると、今まで気が付かなかった新たな一面が見えてくるかもしれません。
そして、周囲の大人が心の成長を気に留めて見守っていることが、子どもたちが感じる「自分は大事にされている」という気持ちに繋がっていくのではないでしょうか。
安心感は心の発達の大切な土台であり、栄養源になっていくと思います。