日常生活の中で、子どもが同じ動作を繰り返す様子を見たことがある方も多いのではないでしょうか?
たとえば、保育園や幼稚園にお邪魔してみると、手をひらひらさせたり、何度も同じおもちゃを回したり、同じルートを何周も走り回っていたりするお子さんの行動がよく観察されます。
これを「常同行動」といいます。
では、なぜこのような行動が起こるのでしょうか?
今回は、常同行動の背景について、特に幼児期にみられる行動や、自閉症スペクトラム障害(ASD)との関係を中心にお話しできればと思います。
常同行動とは?
常同行動とは、同じ動作や行動を繰り返すことを指します。
これは、程度や頻度は異なるものの、誰にでも見られる行動です。
特に幼児や自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ人々に多くみられると言われています。
たとえば、足をトントンとする動きや、同じ言葉を繰り返し口にすることも常同行動の一種と言えるでしょう。
幼児期の常同行動の例
幼い子どもたちが同じ動きを繰り返すのは、ごく普通の発達段階の一部です。
例えば、おもちゃを何度も回転させたり、落としてみたり。ブロックを何度も積み上げたりする行動がそれに当たります。
こうした行動には、以下のような理由があります。
1. 安心感を得るため:
小さな子どもはまだ世界がどうなっているのかを完全には理解していません。同じ動作を繰り返すことで、「これならうまくいくんだ」「できた」という予測可能な結果(こうやったらこうなるんだな〜ということ)を得ることができ、安心感を感じると考えられます。
2. 自分の能力を確認するため:
子どもは自分の身体や道具を使って、どれだけのことができるのかを実験しています。同じ動作を繰り返すことで、自分の成長や達成感を確認しているという見方もできます。
自閉症スペクトラム障害(ASD)との関係
常同行動は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴の一つとしても知られています。
ASDの子どもたちは、感覚に対して非常に敏感であったり、逆に鈍感であったりすることがあります。
そのため、特定の動作を繰り返すことで、感覚の過負荷を抑えたり、心を落ち着かせたりすることがあるのです。
学術的にも、ASDの人々において常同行動が多く見られる理由については研究が進んでおり、感覚処理の違いやストレス対策としての役割があるのではないかと指摘されています。
常同行動は、周囲の混乱や多すぎる刺激から心を守る方法の一つともいえるでしょう。
なぜ常同行動が起こるのか?
常同行動が起こる理由は様々ですが、主に以下のような要因が考えられます。
1. 不安やストレス:
常同行動は、不安やストレスが原因で発生することがあります。
特に、ASDの子どもたちにとって、新しい環境や予測できない出来事は大きなストレス要因となり、その結果、繰り返し行動をすることで落ち着きを得ることがあるのです。
2. 感覚刺激への対応:
感覚が過敏である場合、周囲の音や光、触感に圧倒されることがあります。
これを和らげるために、繰り返し動作を行うことで感覚を制御し、安心感を得ると言われています。
3. 自己刺激行動:
一部の常同行動は「自己刺激行動」としても知られています。
たとえば、手をひらひらさせることで視覚的な刺激を楽しんだり、体を揺らすことで身体的な感覚を確認したりすることがあります。
周囲の人間ができること
もしお子さんが常同行動を頻繁に行っている場合、まずはその背景にある感情や環境を理解しようとすることが大切です。
強制的にやめさせても、また同じことを始めたり・・・の繰り返しになりがちです。
また、無理にストップするとそれがストレスとなり、気になる行動が増えるケースもあります。
なぜその行動をしているのかな?(何を楽しんでいるのかな、何が不安だったんだろう)と、背景を考えてみると、子どもの好きなことや苦手なことが見えてくるかもしれません。
例えば、新しい場所に行く際に、お気に入りのおもちゃや物を持っていくなど、安心感を持たせる工夫をすることも考えられます。
また、常同行動がその子にとっての楽しいこと・遊び方になっているような場合は、「適度な刺激」が不足しているのかもしれません。水遊びや粘土、動かすことで音がするおもちゃなど、感覚遊びを取り入れることで常同行動が結果として減ってくる場合もあります。
まとめ
常同行動は、幼児期やASDの特性をもつ方によく見られる行動ですが、その背後には感情的な安心感を得る役割や感覚処理の役割があります。
周囲の大人は、子どもの行動をただ「変だ」と捉えるのではなく、その行動の背景にある心理を理解し、必要に応じてサポートすることが重要です。
子どもだけではなく、大人の方で同じような行動をする場合ももちろん考えられます。
そのような場合に、何も知らないと「どうしたんだろう?」とびっくりしたり、怖いと感じたりするかもしれません。
常同行動についての知識を持っていれば、「この行動をすることで落ち着く人もいるんだな」という想像力を働かせることができます。
知らないことや予測できないことは誰しも怖いものです。
正しい知識を持っておくこと、知ろうとする姿勢で接することが何事にも大切なのではないかと思います。