ミラーリング:カウンセラー視点で見るコミュニケーションの効果

はじめに

ミラーリング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

ミラーリングとは、会話している相手の姿勢や動作、言葉遣いなどを意図的に真似る行為を指します。

ミラーリングはカウンセリングだけでなく、家族や友人との会話、職場でのやりとりなど、日常のコミュニケーションの中でも効果的に使うことができます

この記事では、ミラーリングがどのようにコミュニケーションに影響を与えるのか、カウンセラー視点から解説してみたいと思います。

ミラーリングとは

ミラーリングは、「無意識の同調行動」とも言われます。

人は自然と、好意を持った相手や信頼関係を築きたい相手の動作を真似る傾向があると言われています。これにより、相手との心理的距離が縮まり、信頼感や安心感が生まれやすくなるのです。

この特性を活用して、あえて動作を真似ることにより、緊張感をやわらげ、心理的距離を縮めるような効果を作り出すことができます。

ミラーリングにはなぜ効果があるの?

ミラーリング(動作の真似)を取り入れることで、信頼関係を築きやすくなったり、安心感が生まれたりすることをご説明しました。

ではなぜ、ミラーリングにはそのような効果があるのでしょうか?

1. ミラーリングと「ミラー・ニューロン」

ミラーリングの効果の背景として、脳の働きが関係しています。その中でも重要なのが「ミラー・ニューロン」と呼ばれる神経細胞の存在です。

ミラー・ニューロンは、目の前の他者が行動しているのを見たときに、自分が同じ行動をしているかのように反応する神経細胞です。

例えば、誰かが笑っているのを見ていると、自分も笑顔になったり、気分が明るくなったりすることがありますね。これはミラー・ニューロンが働いているためと言われています。

2. ミラーリングと「共感」

ミラーリングは、共感を示す手段としても効果的です。

人は自分に似た行動や言葉遣いをする人に対して親近感を覚える傾向があります。

そのため、ミラーリングによって信頼関係を築きやすくなると考えられています。

例えば、同じ姿勢で座ってみたり、相手が使っている言葉や表現を自分も積極的に取り入れてみたりすることはミラーリングの1つです。

3. ミラーリングと「無意識の同調」

人は無意識的に、相手と同じような行動を取ることがあります。これは「同調効果」「同調現象」「無意識の同調」等と言われています。

ミラーリングはこの自然な傾向を意図的に利用することで、相手との心理的な距離を縮めるような効果があります。

例えば、レストランで友達と食事をしている時、相手が飲み物を飲むと、自然と自分も同じように飲み物を飲むことがあります。意識せずとも、同じタイミングで同じような行動をとっている時、「同調現象」が現れているとわかります。

カウンセリングにおけるミラーリングの効果

カウンセリングの場面では、クライアントが自分のことをお話ししやすくなるような、コミュニケーションの土台を作るためにミラーリングが活用されます。

具体的には、以下のような感じです。

信頼関係の構築:

クライアントが話しやすくなるよう、カウンセラーはクライアントの姿勢や言葉遣いを適度にミラーリングします。これにより、クライアントの緊張が和らいだり、親近感を感じやすくなったりする効果があります。

共感の促進:

クライアントが自分の気持ちや考えを共有する際、カウンセラーがそれを受け入れる姿勢(共感する姿勢)を示すためにミラーリングを行います。共感の姿勢を示すことで、クライアントは自分の感情や思考がしっかりと相手に理解されていると感じ、安心して話しやすくなると考えられています。

日常生活におけるミラーリングの活用

ミラーリングは日常のコミュニケーションでも役立っています

例えば、初対面の相手との会話やビジネスの交渉の場面では、以下のように応用することができるかもしれません。

相手に良い印象を持ってもらうために:

相手の話し方やジェスチャーを適度にミラーリングすることで、相手に対して自分がポジティブな感情を持っていることが伝わりやすくなり、初対面でも良好な関係を築きやすくなることが期待できます。

共感を伝えるために:

相手の気持ちや立場を理解しようとする姿勢を示すために、相手の言葉遣いや声のトーンをミラーリングすることで、相手は「この人は自分のことを理解してくれている」と感じやすくなります

緊張を和らげるために:

緊張感が高い場面では、相手の姿勢や言動をミラーリングすることで、場の雰囲気を和らげることができます。

まとめ

ミラーリングは、人と人との信頼関係を築くことや共感を伝えること、緊張を和らげることといった効果をもたらす、とても有効なコミュニケーション技法です。

カウンセリングだけでなく、日常の様々な場面でも活用できるため、ぜひ意識して取り入れてみてください。効果的なミラーリングを行うことで、よりよい人間関係が広がり、自分にも相手にも心地良いコミュニケーションが増えると良いですね。