「ゲートキーパー」という言葉を知っているでしょうか?
メンタルヘルスの分野では、「周囲の人の異変に気がつき、最初に声をかける人」をゲートキーパーと呼んでいます。
日本の自殺者数は年間2万人以上と言われており、一人でも多くの人が「ゲートキーパー」の役割を知って、周囲の人の助けになったり、自分自身のメンタル不調に気がついてセルフケアができたりすることが必要なのではないかと思います。
ゲートキーパーといっても、カウンセラーなどの専門家でなければできないような役割ではありません。
たとえば、友人や家族が悩みを抱えているときに、その話を聞くことがあると思います。
このとき、私たちはゲートキーパーとして、相手の心の健康を守る重要な役割を担っているといえます。
特に、相手が精神的に不安定であったり、深刻なストレスを抱えているとき、適切なサポートを提供することが大切です。
ゲートキーパーって何?
ゲートキーパーとは、主に心理的なサポートを通じて、周囲の人々が抱える問題や危機に気づき、必要な助けを差し伸べる人のことを指します。
たとえば、職場で同僚がストレスを感じているように見える場合、その人の変化に気づいて「大丈夫?」「いつもと違うように見えるけど…」などの声をかけることが、ゲートキーパーとしての第一歩です。
日本では、自殺対策やメンタルヘルスの領域で特に重要と言われており、困っている人を早期に見つけ出し、適切な支援につなげる役割があるとされています。
政府の調査によると、ゲートキーパーの役割を強化した地域では、精神的な危機にある人々が早期に支援を受けることができるため、介入が遅れるリスクが減少しているというデータもあります。
日常生活の中で
たとえば、学校でクラスメートが最近元気がないことに気づいたら、ちょっとした声かけをすることが考えられます。
「最近どう?」「何かあったら話してね」といったシンプルな言葉でも、相手に寄り添うきっかけを作ることができます。
また、声をかけられた人にとっては、「気にかけてくれる人がいるんだ」ということ自体がプラスに働く場合もあります。
他にも、家族が過労やストレスで食欲がなかったり、眠れないといったサインがあったりすることから異変に気が付くのも、ゲートキーパーの大切な役割です。
こうした日常の中で「何か変だな」と感じた時点で声をかけることで、問題が深刻になる前に相談に繋がったり、本人が誰かに頼るきっかけを作る助けになります。
困っている人に耳を傾ける際の注意点
ゲートキーパーとして耳を傾ける際に、気を付けたいポイントについてまとめてみたいと思います。
1. 判断や助言を急がない
相手が話し始めたばかりの段階で、すぐに「こうしたらいいよ」と助言をするのは避けましょう。
良かれと思っての一言でも、不安定な状態では「気持ちをわかってもらえなかった」「そうできない自分がダメなんだ」とネガティブに受け取り、より落ち込んでしまう場合があります。
まずは、相手の感情や状況を受け止めることが大切です。
「そんなことで悩むなんて」といった否定的な言葉も控え、共感的な姿勢を心がけましょう。
2. 聞く姿勢を大事にする
話を聞いているときは、相手の話に集中し、相手の視点に立つことが大切です。
相手がどんな感情を抱いているのかを感じ取り、相槌や頷きなどを使って、「あなたの話をしっかり聞いていますよ」という姿勢を伝えましょう。
3. 安心できる環境で聞く
周囲に人通りが少ない場所や、個室など、プライバシーを守ることができる環境があればより安心してお話しできる場合が多いです。
相手の話した内容を他の人に話さないということを最初に確認することで、安心感を感じてもらうことができます。
ゲートキーパー自身のセルフケア
ゲートキーパーとしてサポートする立場の人自身も、心の健康を大切にしなければなりません。
特に、他人の悩みや問題に長時間向き合うことは、心の負担が大きくなることがあります。
こうした現象は、「共感疲労」と呼ぶこともあります。
以下のセルフケアのポイントを参考に、自分の心もケアする習慣を作りたいですね。
1. 自分の限界を知る
ゲートキーパーとしてサポートする中で、自分ができること・できないことを考えておくことも必要です。
例えば、カウンセラーが支援をおこなう場合でも、医師ではないため診断や投薬はできません。
友人や家族の悩みを聞く場合にも、しっかりと耳を傾けた上で、医療受診や専門家への相談を提案することも必要な支援となります。
相手が適切な専門的支援を受けられるように、専門家や他のリソースに繋げる役割を担うことも重要です。
2. リフレッシュの時間を持つ
自分自身のリフレッシュタイムを設け、ストレスとうまく付き合っていく方法を見つけましょう。
趣味やリラクゼーションを楽しむことで、心身をリセットすることができます。
3. 一人で抱え込まない
ゲートキーパーである自分自身もまた、サポートを受けられる存在です。
信頼できる友人や専門家に自分の悩みを相談し、自分自身も適切なケアを受けましょう。
終わりに
ゲートキーパーは日常生活の中でとても重要な役割を担っています。
相手の小さなサインに気づき、耳を傾けることで、精神的な危機を防ぐことができます。
しかし、そのためには、ゲートキーパー自身も心の健康を大切に、健康に生きていく必要があります。
人間は「社会的な生き物」とも言われます。
お互いに支え合いながら、健康なコミュニケーションを心がけたいですね。