こんにちは。
今日は「生物心理社会モデル」という言葉についてお話ししようと思います。
対人支援の場面では頻繁に登場する考え方ですが、もしかしたら聞きなれない方もいらっしゃるかもしれません。
実は私たちの日常生活や健康に関する困りごと・悩みを考える時にとても参考になる考え方の一つです。
具体的な事例を交えながらまとめてみたいと思います。
生物心理社会モデルとは?
そもそも生物心理社会モデルとは?
簡単に言うと、健康や病気を「生物学的」「心理的」「社会的」の3つの視点から総合的に理解しようという考え方です。
それぞれの視点がどんなものか、具体例で見ていきましょう。
事例:Aさんのストレス管理
Aさんは30代のサラリーマン。最近、仕事が忙しくて毎日残業が続き、なんだか気分が落ち込んでいます。食欲もなくなり、夜もなかなか眠れない状態。
こんなAさんの状況を、生物心理社会モデルで見てみましょう。
1. 生物学的要因
Aさんの体は、様々な形で「ストレスがかかっているよ」とSOSのサインを出しています。
ストレスがかかると、体はコルチゾールというホルモンを出しますが、これが長期間続くと免疫力が低下し、病気にかかりやすくなると言われています。Aさんの食欲不振や睡眠を取りづらくなることも、体がストレスになんとか対抗しようとする、生物学的な反応です。
2. 心理的要因
心理的な面では、Aさんは今の状況に対して「仕事がしんどいな…このまま続けられるだろうか」「体の疲れもとれないし、やる気も出ない…」等、不安や憂鬱な気持ちを抱いています。
仕事のプレッシャーが大きく、心の中で「どうしてもやらなきゃ」「失敗したらどうしよう」といったネガティブな思考がぐるぐるしています。このぐるぐる思考が、さらにストレスを増幅させています。
3. 社会的要因
社会的な面では、Aさんの職場環境が大きな影響を与えています。例えば、多すぎる業務、長時間労働、サポート体制の不足(上司や同僚に相談しづらい)などがあるかもしれません。
また、家族や友人との関係はどうでしょうか。もし周りに話を聞いてくれる人がいれば、少しは気持ちが楽になるかもしれませんが、Aさんは平日は残業で忙しく、休日は昼過ぎまで寝てしまう状況で、なかなか人と会う時間が持てていません。
3つの視点のまとめ
3つの視点で見てみると、生物(体の反応)、心理(気持ちや考え)、社会(職場や家庭の状況)というそれぞれの角度から問題を整理して捉えることができます。
また、人によっては「何が1番しんどいのか」といったことや、「どこが変えられそうかな?」なども考えるきっかけになるかもしれません。
生物心理社会モデルで解決策を考える
さて、Aさんが健康を取り戻すためには、この3つの視点からどんな解決策が考えられるでしょうか?
あくまで1つの例ですが、具体的にまとめてみたいと思います(これが正解!というわけではなく、「このAさんの場合はこんなアイディアがあるよ」という意味合いで捉えていただければと思います)。
生物学的アプローチ
まずは、「体のケア」を始めることも大切です。
「心の状態」と「体の状態」は深く関係しています。規則正しい食事や十分な睡眠を取ることが心の健康の土台になると考えられます。
また、「前向きになる」「ポジティブに考えよう」と心を変えようとするよりも、「整体に行って体の疲れを取る」「まずは睡眠時間を確保してみる」など、体に働きかけるほうが行動に移しやすいことも多いのです。
Aさんの場合は睡眠や食欲にトラブルが出ているため、自分だけでは改善が難しい場合は医師に相談して適切な治療を受けることも必要です。
心理的アプローチ
次に、心のケアです。
カウンセリングを受けることで気持ちや考えを整理し、1人では気が付かなかった解決の糸口を探ることができます。
また、ストレスに対処できるようになるためのリラクゼーション法を習得することも有効です。
例えば、深呼吸や瞑想、自律訓練法などのリラクゼーション法は、すぐに始められ、自宅で1人でも実施できるストレス対処法です。
1人で実施する場合にも、効果が感じられなかったり、やり方が具体的にイメージできない場合はカウンセリングで専門家に相談し、実際に一緒にやってみてコツを掴むこともおすすめです。
社会的アプローチ
最後に、社会的なサポートを活用しましょう。
可能であれば職場の上司や同僚に相談し、仕事の負担を軽減してもらうのも一つの方法です(環境調整と言ったりします)。
また、家族や友人との時間を増やし、仕事と関係ない場でただ話を聞いてもらうことで気持ちが楽になることもたくさんあります。
まとめ
Aさんの例を通して、生物心理社会モデルで考えるイメージが湧いてきたでしょうか?
このモデルは、一つの視点にこだわらず、複数の要因を総合的に考えることで、より効果的な解決策やその人が実行しやすい対処を見つける手助けをしてくれます。
心や健康に関する悩みがあるときは、このモデルを参考にしてみると良いかもしれませんね。
それでは、皆さんも健康第一でお過ごしください。