心理療法(カウンセリングの方法)には様々な種類がありますが、今日は日本発祥の心理療法の1つ、森田療法についてお話ししたいと思います。
森田療法とは
森田療法は、日本の精神科医・森田正馬によって開発された心理療法です。
特に不安障害やうつ病の治療に適した療法であると言われていますが、いろいろな工夫をおこないながら様々な心理的問題に応用して用いられています。
この療法の中心理念は、「あるがまま」を受け入れることにあります。
最近広く知られるようになった、マインドフルネス瞑想等も「あるがまま」や「今ここで感じていること」を重視しており、似ている面があると言えます。
森田療法の基本理念
「あるがまま」を受け入れるとは、そもそもどのような状態でしょうか?
森田療法では「症状をどうにかしよう」と考えるのではなく、「症状と共に生きる」という在り方を重視します。
不安を異常なものとして排除しようとするのではなく、誰にでもあるものとしてあるがままに受容します。また、「強い不安にとらわれる人には、それだけ強い生の欲望がある」という捉え方をし、不安のポジティブな面を強調します。
森田療法の実際の進み方
初期の森田療法では、主に入院治療が行われていました。現在では通院治療でも実施できるような工夫もなされていますが、まずは入院治療における進み方をご紹介したいと思います。
1. 臥褥期(がじょくき)
クライエントは最初に静養し、外界からの刺激を減らして休息します。この期間は不安や恐れと向き合いながらも、それらを受け入れる準備をします。
2. 軽作業期
徐々に簡単な作業に取り組むようになります。この時期には、基本的に1人で軽い作業に取り組みながら、気分や体調の変化に意識を向けます。
3. 作業期
より複雑な作業をグループでおこなうことで、徐々に日常生活に復帰する準備をしていきます。この段階で、症状があってもそれに囚われずに行動することを意識します。
4. 社会復帰期
最終的には、社会生活に完全に復帰する準備を行います。この段階では、不安や恐怖が残っていても、それらと折り合いをつけて対処しながら、通常の生活を送る能力を身につけることが重視されます。
カウンセラーの役割
カウンセラーは、クライエントが「あるがまま」を受け入れられるようにサポートします。具体的には、以下のような姿勢でアプローチしていきます。
- 共感と受容: クライエントの感じている不安や恐れを否定せず、そのまま受け入れる姿勢を支持します。
- 指導と助言: クライエントが作業に取り組む際に、適切な指導や助言を行い、無理のない範囲で活動を増やしていくサポートをします。
- 観察とフィードバック: クライエントの進行状況を観察し、必要に応じてフィードバックを提供します。これにより、クライエントは自分がどこまで進んでいるのかを客観的に捉えることができ、自己効力感を高めることにつながると考えられます。
日常生活での応用
森田療法の考え方は、日常生活の中でも応用することができます。不安やストレスを感じるとき、それを無理に取り除こうとするのではなく、「あるがまま」を受け入れる姿勢を持つことを意識することができるでしょう。
例えば、仕事でのプレッシャーや人間関係の問題に直面したとき、それらを避けるのではなく、「自分は今不安を感じているな」「怖いという気持ちがあるのだな」とその感情を受け入れつつ、目の前の課題に集中することで、感情に振り回されずに行動しやすくなるかもしれません。
まとめ
森田療法は、不安や恐れを無理に取り除くのではなく、それらを「あるがまま」に受け入れ、日常生活を送る力を養うことを目指します。カウンセラーは、クライエントが治療の過程を経て自己効力感を高めるよう、共感的に接しながら、具体的な助言・指導を実施します。日常生活でも、森田療法の考え方を取り入れることで、ストレスや不安に対処しやすくなります。
森田療法において、入院治療が必要かどうかは、クライエントの症状の重さや生活状況、治療環境などによって判断されます。
症状が重かったり、環境によるストレスが大きかったりする場合や、専門的な観察が必要な場合には入院治療が有効と言えます。入院することで日常生活から離れ、ゆっくりと休息を取りやすくなることも大きなメリットです。
また、軽度から中等度の症状の場合や日常生活(仕事や学業など)を続けながら治療を行いたい場合には、外来治療・通いでの心理面接が適しています。主治医やカウンセラーと相談しながら、自分に最適な治療方法を選ぶことが重要です。