今日は、他者とより良いコミュニケーションをとるためのスキルの1つ、「アサーション・スキル」についてお話ししたいと思います。
アサーションとは、「適切な自己主張・自己表現」の一種で、自分の意見や感情を尊重しつつ、相手の意見や感情も同じように尊重するコミュニケーションの方法です。
特に夫婦関係では、アサーションスキルを活用することでお互いの理解が深まり、より対等でお互いに思いやりをもった関係を築く助けになります。
アサーションとは？
アサーションは、自分の考えや感情を正直に表現しながら、相手の権利も尊重するコミュニケーションのスタイルです。攻撃的でも受け身的でもなく、「相手を思いやりながら、自分自身の思いもハッキリと伝える」バランスの取れたアプローチと言えます。
アサーションの3つの基本的な要素は以下の通りです：
1.率直に伝える：自分の思いや感情を率直に伝えること。
2.自己尊重：自分の権利や感情を大切にすること。
3.他者尊重：相手の権利や感情も大切にすること。
アサーション・スキルの活用方法
アサーション・スキルには様々な種類がありますが、ここでは代表的で、日常生活に取り入れやすいものをご紹介したいと思います。
1.「I（アイ）メッセージ」の活用
自分の感情や考えを「I（私）」を主語にして伝える方法です。これにより、相手を責めるニュアンスを含まずに、自分の気持ちを正確に伝えることができます。
例：夫が頻繁に遅く帰ってくることに対して
攻撃的：あなたはいつも遅く帰ってきて…私のことなんて全然考えてないんでしょ！
アサーティブ：遅く帰ってくると私は心配になる。これからは事前に連絡をもらえると安心だなぁ。
2.相手の話に耳を傾ける
アサーションでは、相手の話をまず聴くことも重要です。相手の言葉だけでなく、感情や「どういう意図でその言葉を言ったのかな？」と背景を理解しようとする姿勢があるとより相手も「理解してくれた」「理解してくれようとしている」と感じるため、お互いの言葉を受け取りやすくなるコミュニケーションの土台ができます。
例：妻が忙しい日常にストレスを感じているとき
攻撃的：そんなに忙しいなら、もっと要領よくやればいいじゃないか。
アサーティブ：毎日忙しそうだけど、どんなことに一番ストレスを感じているの？何か手伝えることはあるかな？
3.問題解決のための話し合い
問題が発生したとき、互いに責め合うのではなく、「一緒に問題解決するための仲間」というスタンスで関わることができます。
例：家庭内の仕事分担について
攻撃的：あなたは全然家事を手伝ってくれない！
アサーティブ：最近、家事が増えてちょっと負担に感じてるんだ。もう少し分担を見直したり、どうすれば良いか一緒に考えてほしい。
アサーション・スキルが夫婦関係にもたらす良いこと
アサーション・スキルを活用すると、夫婦関係に以下のような良い影響が出てくると考えられます：
1.誤解によるトラブルが減る：
アサーション・スキルを活用できると、自分自身の気持ちを、回りくどく言ったり相手に察してもらおうとしたりせず、率直に伝えるコミュニケーションがとれるようになります。そのため、誤解によるすれ違いが減り、お互いに相手の考えや気持ちを理解しやすくなります。
2.感情的な絆が強まる：
お互いの考えや気持ちを尊重し合うことで、感情的な絆、信頼が強まります。
3.問題解決能力の向上：
協力して問題に取り組む姿勢が育まれると、問題が生じた時に夫婦で話し合って解決する力が向上していきます。結果的に、「一緒にトラブルを乗り越える」夫婦関係が育まれるといえます。
4.自己尊重と他者尊重のバランス：
自分の意見や感情を大切にしつつ、相手の意見や感情も尊重することで、対等で健康的な関係が築けます。
「親しき仲にも礼儀あり」？
例えば、ある夫婦がアサーションスキルを学んだことで、妻が夫に対して「最近忙しくて一緒に過ごす時間が少ないのが寂しい。少しでも良いから時間を作って、一緒に過ごせる時間を大切にしたいな」と伝えることができたとします。夫は妻の「寂しい」気持ちを言葉で伝えてもらったことで、意識的に時間を作るようになり、二人の関係がより良好になるということはよくあるケースです。
「忙しくて一緒に過ごす時間が少ない」という同じ状況であっても、つい私たちは（親しい相手だからこそ）感情的になってしまうことがあります。たとえば、「全然一緒に過ごしてくれないよね。私のことなんてどうでもいいんでしょ？！」と語気を強めて言ったとしたらどうでしょう。背景に「寂しい」気持ちがあったとしても、夫の側からすると「責められた」「自分（夫）が悪いって言いたいの？」と落ち込む気持ちや反論したい気持ちが湧いてくることでしょう。
アサーション・スキルは、もちろん慣れないうちは意識して練習していくことが大切ですが、日常生活にすぐに取り入れることができます。そして、夫婦関係だけではなく、友人関係・上司部下の関係・親子関係等、あらゆる人間関係において役立ちます。
皆さんも、ぜひ取り入れやすい「I（アイ）メッセージ」から、アサーション・スキルを活用してみてください。
それでは、今週も素敵な一週間をお過ごしください！