こんにちは。
今日は「他者の心を理解する」ために重要な「心の理論」という心理学の概念と、それを測定するための有名な実験「サリーとアン課題」についてお話ししたいと思います。
心理学の講義では必ず取り上げられる概念で、現在でも心の発達をみるために使われたり、自閉症スペクトラムの有無や度合いを調べるために活用されたりしています。
心の理論とは?
まず、「心の理論」について説明したいと思います。心の理論とは、他者の心の状態(考え、感情、信念、意図など)を理解し、それに基づいて他者の行動を予測する能力のことです。
この能力は、私たちが日常生活で他者とのコミュニケーションを取る際に必要となります。例えば、友人が悲しそうにしているとき、私たちはその感情を理解し、適切な対応(つまり、「大丈夫?」と心配したり「辛いね」と共感して寄り添ったりする行動)をすることができます。
サリーとアン課題とは?
次に、「サリーとアン課題」について説明します。
この実験は、子どもが「心の理論」をどの程度身につけているかを測定するために使われています。
実験の概要
子どもに対して、人形やおもちゃを使いながら1つのストーリーを話して聞かせ、その後で質問に答えてもらいます。その流れは以下の通りです。
1. 登場人物の紹介:まず、二人の人形「サリー」と「アン」が登場します。
2. 物語の開始:サリーはボールを持っていて、それを自分のカゴに入れます。
3. サリーが出ていく:サリーは部屋を出て行きます。
4. アンの登場:サリーがいない間に、アンがボールをカゴから取り出し、自分の箱の中に移動させます。
5. サリーが帰ってくる:サリーが部屋に戻ってきます。
この時点で、子どもに「サリーはボールをどこに探しに行くと思う?」と尋ねます。
予想される反応
心の理論が発達している場合:
子どもは「サリーはカゴを探す」と答えます。これは、サリーがボールの移動を知らないため、彼女が最初に置いた場所(カゴ)を探すだろうと想像できていることを示しています。
心の理論が未発達な場合:
子どもは「サリーは箱を探す」と答えるかもしれません。これは、子どもが自分の知っている情報(ボールが箱にあること)をサリーも知っていると誤って理解していることを示しています。
心の理論の発達
通常、心の理論は個人差があるものの4歳~5、6歳くらいの時期に発達すると言われています。
しかし、自閉症スペクトラムの傾向を持っている子どもたちは、この能力の発達がゆっくりであることがあります。そのため、サリーとアン課題は自閉症傾向の早期発見や診断においても重要なツールとなっています。
まとめ
心の理論と、それを測るためのサリーとアン課題についての理解は、「相手の立場で考える力や思いやりはどのように身について行くのか?」を考えるヒントになります。
また、「心の理論」がどの程度身についているかを観察できることで、心の理論やコミュニケーションに苦手さを持つ子どもが早期に専門家のサポートを受けるきっかけになるのではないかと思います。
コミュニケーションや他者理解、想像力などの力は、子どもそれぞれに合わせた方法でトレーニングをおこなう「療育」を受けることで改善していくと言われています。また、苦手さが残ったとしても、苦手を補う対処法やストレスへの対処法を身に着けることで生活しやすくなる場合が多くあります。
以上、今日は心の理論とサリーとアン課題についてお話ししました。
お子さんの行動や対応方法についてのお悩みや、ご自身の性格について等、カウンセリングでは様々な相談をお受けしています。
もしお悩みのことがありましたら、お気軽にご相談いただければと思います。