ギャンブル依存(ギャンブル障害)

「ギャンブル依存」はDSM-5(世界で多く用いられている精神疾患の診断・統計マニュアル)では「ギャンブル障害」と呼ばれており、精神疾患の1つとして数えられています。

最近では大谷翔平選手のニュースでも話題となったため、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

今回はギャンブル障害についてまとめたいと思います。

ギャンブル障害とは

以前は「病的賭博」という名称が使われており、その名前のとおり、ギャンブルに対して病的にのめりこむことで、本人や家族の生活、職場や友人関係などの社会生活が破綻してしまう状態を指しています。

DSM-5では、「物質関連障害および嗜癖性障害群」の中の、「非物質関連障害群」に分類されています。

これは、いわゆる「依存症」の中でも、アルコールや薬物などの物質に依存するのではなく、「ギャンブル」という行為自体に依存するということから、「非物質」という言葉がついています。

また、単純に「ギャンブルがやめられない」ということ以外に、付随して「ギャンブルにのめりこんでいることを周囲に隠そうとして嘘をつく」「借金を背負ってしまう」「ギャンブルで失ったお金を取り戻すためにさらにお金をつぎ込んでしまう」というような行動を重ねることで、社会生活が危険にさらされることが、本人にとって大きなダメージとなる場合が多くあります。

ギャンブル障害の特徴

DSM-5では、以下の9つの項目に過去1年間の間で4つ以上該当する場合、その人は「ギャンブル障害である」と診断できるとしています。

1.スリルを楽しんだり、ギャンブルによる興奮を得るために、掛け金を増やしてギャンブルをしたいという欲求

2.ギャンブルをするのを中断したり、または中止したりすると、ソワソワと落ち着かなくなったり、いらだったりする

3.ギャンブルをする回数を減らしたり、お金を使いすぎないようにしたり、ギャンブル自体をやめようとしたりするなどの努力を繰り返すが、成功しなかったことがある

4.ギャンブルをしていない時でも、ギャンブルのことをずっと考えている(常に頭の中で次はどんなギャンブルをしようか考えたり、掛け金をどのように手に入れるか考えたりしている)

5.精神的な苦しさ(無気力、罪悪感、不安、抑うつ)を感じているときにギャンブルをすることが多い

6.ギャンブルでお金が無くなった後、別の日に失ったお金を取り戻すためにギャンブルへ行くことが多い

7.ギャンブルへのめり込んでいることを周囲へ隠すために嘘をつく

8.ギャンブルのために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらしたり、失ってしまったことがある

9.ギャンブルで金銭を失ったことで絶望的な経済状況になることを回避するため、他人にお金を貸してくれるよう頼む

人生への影響

9つの特徴からも分かる通り、「ギャンブルでお金をすってしまう」という経済的なリスク以上に、

「ギャンブルを隠すために嘘をつく」「重要な人間関係(家族や友人等)を失う」「仕事上の(社会的な)信頼を失うことによる失業」等のリスクも大きいと言えます。

また、周囲から孤立し、ギャンブルをし続ける限り「経済的な不安」もついて回るため、そのような孤立感や周囲に嘘をついている罪悪感、不安をギャンブルをすることで一時的に和らげる、という悪循環が強固にできあがってしまいます。

ギャンブル障害の治療

ギャンブル障害は、現在では心理療法、薬物療法、作業療法など様々な方法を組み合わせて治療がおこなわれています。また、ギャンブルをしない生活を送りやすくなるような環境を整えることも大切です(生活環境調整)。

悪循環を一度強制的に断ち切るために、入院治療を選択する場合もあります。

どのような方法でも共通している要素として、「これまでギャンブルでストレスを発散していた」というような場合は、「ギャンブル以外の方法で適切にストレス発散をする」ことが必要となります。

仮に入院したとして、入院中は環境的にギャンブルすることができないので、行動に移さずに済みます。また、入院中は日常生活にある対人関係や仕事、学校などのストレスから隔離されます。

しかし、退院後はいつもの日常生活に戻っていくことになります。

そのため、ストレス対処のスキルがないまま退院すると、再度ギャンブルをしてしまう「再発」のリスクが非常に高いと言えます。

ギャンブル障害に関わらず、ストレスへの対処が「何か1つの物や行動に限定されてしまう」時に「依存」という状態が成立しやすくなります。

何かに偏って依存することを予防するためにも、自分自身に合った適切なストレス対処法やセルフケアを身に着けることは大きなプラスになると考えられます。

カウンセリングや心理療法の中にも様々な方法がありますが、ストレスへの対処を身に着けストレス耐性を高めたり、自宅でセルフケアすることで心身ともに健康に生活するお手伝いをすることはカウンセリングの重要な役割です。

ギャンブルやお酒、買い物などで発散することが続いているときは、一度専門家への相談をしてみて対処の幅を増やせると良いかもしれません。